なお、当日はNHK北海道の取材もあり、仲間も多く集まってくれて盛況だった。
さて、その実験の結果を紹介。
実はかなり以前から仲間内で、どの仕口が強いのかという議論があった。
コアな仲間だけでも所属企業は数社に及ぶが、各社でやり方も違い、また、職人各自で違うこともある。いつか試してみたいとは思っていたものの、材料も手間もかかるし、なかなか踏み出せずにいた。
それが、ようやく機会を得たのだ。
さて、まずは実験方法。引き出しを想定し、材のバラつきを抑えるために桐の15ミリの集成材を使用。ただ、破壊しやすいように底板は入れず枠だけにする。そして、特注家具屋で現実的な仕口6種で接合する。その接合方法は
1.チリ(追い入れとかが正式名称だろうか?しかし皆こう呼ぶ) 4ミリ厚
2.チリ 7ミリ厚
3.ドミノ
4.ビスケット
5.ダボ
6.タッカ
以上の構造。
チリに関しては、そのサネの厚み自体も議論になったことがあるので、2通り。
皆で手分けして作業。
1.チリ これは4ミリ厚。他にもう一つ、7ミリ厚も。
3.ドミノ
楕円の穴をあける専用機械があり、そのチップ。ほぞとダボの中間のようなもの。雇いほぞとでも言えるのか。工作機、チップ共に高額。
4.ビスケット
これも専用機械で加工し、専用のチップがある。丸のこのアールと同じ形状で、つまり機械は丸のこの先だけを一定の深さに切り込むというもの。
5.だぼ
これは知っている人も多いのでは。
6.タッカ留め
最後はこれ。空気圧で釘を打ちつける。つまり、材はバサッと定寸にかっとするだけ。
さあ、そして皆で組み立て。
組み立てたもの。
接着剤が乾くまでしばらく放置。
いよいよ破壊。
梯子の段を目盛りにして、ひもで吊って、ぱっと放して落下させるというもの。
さて、強度の強い順番を予想しよう。
落下!
破壊。
高さを変え、壊れるまで高くしていく。
さて、その結果は。
壊れた順番は
1、チリ 7ミリ
2、チリ 4ミリ
3、ビスケット
4、タッカ
5、ダボ
6、ドミノ
の順。
さて、検証しよう。
つまり、溝を切った先の残った部分が弱点になる。繊維方向は強いから、この場合オスの方が先に破壊されることはまずないだろう。とすれば、残った部分が多ければ多いほど、強度は増すはずである。そこで、7ミリと4ミリで試してみたのだ。ちなみに、僕は4ミリ、もしくは3ミリを推奨していたが、ルータでその幅の溝加工をしている人は知らない。半分くらいの7ミリ前後が主流に感じている。
しかし結果は、大差なし、ほぼ同じ。腰の高さ程度からの落下で、どちらもパシャという音であっけなくバラバラ。
ビスケットは、まだ強度があったが敢え無くこの順位。
やはり理屈は同じ。ただ、溝が部分的なためにその分だけ強度が出たと思われる。
次はタッカと接着剤。ひしゃげてしまったのでTKO。
しかし強度は十分、そう簡単には壊れないと分かった。もっとも質の低い接合(釘の穴も見えるし)と思われているが、多少の見た目と強度ならば、お客さんはどちらを喜ぶか検討すべきかもしれない。
ダボについては、結局落下では壊れなかった。工場の高い天井近くまで放ってみたが耐えた。
しかしどうしても壊したかったので、力ずくで地面にたたきつけて破壊。
ドミノについては無敵であった。
力ずくで壊したのだが、角のつぶれ方を見ても相当の力まで耐えたことが分かる。
また、このようにドミノのほうが切れている個所まで。
楕円の穴は、材料に負荷をかけないのだと思われる。
さて、これで単純な強度の結果は出た。
しかし、だからと言って強度が強ければいいってものでもない。
ちなみに、ダボは一本2円くらい?ドミノは5円、ビスケットは6円。
また、加工にかかる時間もある。そして引き出しに限っては、そんなに強度が必要ないとも言える。
こういった結果を知った上で、各自が今後の家具作りに反映していけばいいと思う。
僕個人としては、ビスケットとダボを引き出しの幅によって使い分けようと思っている。
それにしても、考え方である。
タッカで釘打ちしたものは、形が歪んでも材が欠損しなかった。最近、修理の依頼を受けた桐のタンス。組み手に竹釘というもので、胴付きが離れてぐらぐらだったのだが、のりを入れて挟んでおいたら十分使用可能な状態になった。もう60年以上使っているものらしい。
もしも剛性の強い接合だったならば、まだびっしりと固まっていただろうか。もしかしたら、再起不能なほどに材が損傷していたかもしれない。
長く使うためには、もしかしたら壊れやすく作り、手入れや修理を繰り返した方がいいのかもしれない。
とにかく、自分たちで経験して知るということは、とても有意義なことだと思う。
ここに集まった仲間たちが、きっと今後の旭川家具の中核になっていくのではないだろうか。
かつて旭川家具業界に大きな影響を与えた「松倉塾」なるもののようになって、僕らで時代を築いていきたい。
皆さまありがとう。
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