チェリー。
極細の25ミリ角の脚を、細いフレームで支える。
脚先をさらに細くして。
シャープな面取りのフレームに、些細な化粧面を施した天板。
長手方向の天板下の幕板を、天板から離す事による抜け感は抜群だ。
軽く軽く、軽快に。
短手の幕板で天板を支えているが、脚にはその短手の仕口が入っている。
そのため、長手の幕板の仕口を脚の同じ位置に入れられない事情もある。
細くするということは簡単ではない。
椅子の製作は手間も多いし、利益は出しにくいし、壊れる可能性が箱よりも断然に多く、危険な加工も多い。
だから、椅子の製作を避ける工場や職人が沢山いる。
だけどもそれを繰り返してきた経験が、他の品物の製作にも生かせている。
こちらはウォールナット。
非常にシンプルなシルエット。
全て35ミリのフレームで天板を支えている。
前のチェリーのテーブルと比べると太いようだが、幕板を一本にするには少し勇気のいる太さだ。
つまり細いという事。
こちらは指物的な構造。
脚と幕板の下端の化粧面の納まりをかっちりと角を出すための仕口になっている。
つまり、脚と幕板の接合部が面の幅の分だけ脚の内側に入っている。
脚の稜線と接合部の線がずれているのだ。
そして天板の下側をしゃくり、脚と天板の間に深い影を回すことで表情を与えている。
天板の下をしゃくるのは意匠のためだけではない。
テーブルをスクエアな印象にするためには、天板と脚をツラに納めたい。
しかし、無垢天板の最大の特徴であり、欠点と言えるかもしれない事だが、湿度変化で伸縮するのだ。
その伸縮による天板の寸法変化を目立たなくする為の工夫なのだ。
面形状は全て繊細なサジ面。
全体のシルエットは非常にシンプルで力強いが、詳細な納まりや仕上げは一転して複雑で繊細だ。
何個もサンプルを作って、わずか数ミリの出入りによる表情の変化を検証しながらの設計だ。
完成を見れば簡単に見えるものも、その裏では吐き気がするほどの試行錯誤が。
納期も無く、悩んでなんかいられない状況だとしても、どうしても自分が納得するまで先に進めないのだ。
設計での思い煩いから逃げて妥協してぱっぱと製作に入ったって、完成した時に何か違うなと思ってしまった時の気分はまさに絶望的だ。
少しでも早くお客さまにお届けすることは大事なサービスだが、時間が無かったから適当に設計なんてできない。
もちろん両立が好ましいが、残念ながら能力不足と経験不足なのかも知れない。
苦しい設計も、いざ製作を開始すればとても楽しく、完成した時に満足出来た時の喜びは表現できない。
そうして製作したものをお客さんが喜んでくれたならば、僕は本当に幸せになれるんだ。
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